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FLATT

PROJECT: 住宅
AREA: 74m²
LOCATION: 大阪市
COLLABORATOR: renoveru
BUILDER: DELIGHT HOUSE

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大阪随一の歓楽街・十三に建つ、築47年のマンション一室のリノベーション。十三駅周辺は歓楽街として栄えているのだが、西側のバイパスを潜ると府下最古の高校である北野高校や野球場を備えた豊かな公園、閑静な住宅群が現れる。一つの小さなエリアの南北を横断するバイパスというただのインフラを潜るだけで、風景が突然180度変容する特異な街区の性質を持っている。
クライアントは若いご夫婦で、旦那さんは当時、鉄道会社に勤務していて、朝から晩まで線路をくまなくチェックする技術者、奥さんは大手百貨店で勤務する一日中立ち仕事をする販売員だった。彼らには懸命に働く大人の気品があるのだが、そんな激動の平日と打って変わって、週末は家の中で漫画を読んだり、映画を見たり、のんびり過ごすことが多かった。

この住宅では、十三の狭い範囲に内在する二項対立の要素を、クライアントご夫婦の生活感と照らし合わせ、建築的思考を重ねた。

私の家庭もそうなのだが、彼らにとって、建築の中でも床というエレメントは非常に重要で、床座を中心とした生活が強く根付いている。この住宅においても、予算の多くを床につぎ込み、その他のエレメントに関しては、最小限のコストに抑えた。床の大部分はウォールナットのヘリンボーンにし、壁との取り合いを無巾木で納めた。フローリングのエンドが入隅にぴしゃりと合った、非常に美しい工匠的気品のある仕上がりである。一方で、壁や天井は既存躯体にモルタルで左官、造作壁は石膏ボードにパテ跡をそのまま残し、仕上げはしていない。また殆どの部屋の仕切りは、足場用鉄管に穴を開けワイヤーを通し、カーテンを吊り下げることで行う。配管も素地のまま残した。仕上げを行わないという建築的に最もhonestyな方法と、その逆のアルチザン性を合わせ持っている。

プラン上で特筆すべき点は、住宅の中心にある円形の書斎である。奥さんがコレクションしている漫画用に設えたこの部屋は、集中して漫画が読めるよう円形にしている。近代ではEric Gunnar Asplundが「Villa Snellman」で、現代ではMiller & Marantaが「Waldhaus」で楕円形の小部屋を人間の心理的内向性を目的として用いているが、この住宅もそれらをレファレンスとしている。またそこは住宅の中の沈思の場でもある。

コスト、素材と納まり、形態、場所性といった、どのプロジェクトにも備わるフラグメントを、安価/高価、ラフ/工匠、矩形/円形、喧騒/閑静といった二項対立の思考で解いた住宅である。